ざっくり言うと
- 運動の敏感期
ここでいう運動とは、一般的にいう体操のことではありません。手や指を使ってこまかな動きをしたくてたまらない「運動の敏感期」を利用して、歩く、はさみで切る、コップに水を注ぐなど、生活に関する活動を多く取り入れ、日常生活の練習をしていきます。 - 感覚の敏感期
かすかな音を聞きつけたり、様々なものを口に含んだりしたがる「感覚の敏感期」を利用して、意識的に感覚器官を使って様々な練習をします。 - 言語の敏感期
子供が文字に興味をもちはじめる「言語の敏感期」に、ことばの発達段階に合わせて教具を使いながらステップを踏み、語彙を豊富にします。 - 数の敏感期
子供が数字や物の大きさや量に興味を示し始めたら、数に関する教具を使い、数字に対する感覚を身に着けていきます。 - モンテッソーリ教育を受けうけることによるデメリット
- モンテッソーリ教育を受けたくても、理想的に受けられる場所が少ないというデメリット
- 自主性を尊重し、個人で「お仕事(教具を使った遊び)」をするので、協調性のない子が育つ
- 「お仕事」は座って静かにするものなので運動量が足りなくなる
- 小学校に上がったときに周囲に順応できない
- モンテッソーリ教育を取り入れている園に通いたくても近くにない
- モンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園・保育園でも、その教育がただしく行われていない場合がある。
- 日本の小・中学校の義務教育ではモンテッソーリ教育を取り入れられないため、幼児期にモンテッソーリ教育を受けていても、就学後にその効果がなくなってしまう不安がある
- まずはモンテッソーリ教育とはどんなものなのかを知ろう
- モンテッソーリ教育を受けることによるデメリット
- モンテッソーリ教育を受けたくても受けにくい、環境によるデメリット
- モンテッソーリ教育はお受験対策の教育ではないが、結果的に受験にも効果的
子育てに関心のある人なら一度は耳にしたことがあるモンテッソーリ教育。最近では、将棋の藤井聡太氏もモンテッソーリ教育を受けていたことでも話題となっています。子供にモンテッソーリ教育を受けさせたいなと興味を持ってはいるけれど、一部では「協調性が育たない」などのデメリットをチラホラと耳にすることはありませんか。
とても素晴らしそうなモンテッソーリ教育、だけどデメリットもあるって本当なの?正解・不正解が出しにくい子育て、教育。だからこそ、ちゃんと知りたい!今回はモンテッソーリ教育のデメリットについて、徹底的に調べてみました。
そもそもモンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育のデメリットを知る前に、そもそもモンテッソーリ教育とはどんなものなのか、まずはしっかり踏まえておく必要があります。そのうえでデメリットとその対処法を知っていただく方が、より理解が深まるからです。モンテッソーリ教育の内容はとても奥が深く、関連書が何冊も出ていますが、ひとまずここでは簡単に触れてみたいと思います。既にご存知の方も、ざっと目を通していただけたら幸いです。
モンテッソーリの教育理念とは
モンテッソーリ教育は、イタリアで医師であり教育家であったマリア・モンテッソーリ博士が立ち上げた教育方法です。その目的は「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」というものです。
子供が成長していく段階に合わせ、独自の教具を使いながら、子供が自らの力で成長していくよう導く教育方法です。大人が子供に「教える」のではなく、子供が自分で成長していく力を伸ばすのを大人が「しっかり観察し、手助けする」という形をとっています。
モンテッソーリの教育方法
敏感期と呼ばれる子供の成長するタイミングに合わせて、最適な教具(玩具ではなく「教具」と呼びます)を提示し、お仕事(遊びではなく「お仕事」と呼びます)を繰り返し気のすむまで行うことで、子供は生きていく力を自らはぐくんでいきます。
教具は、子供が興味を持ったものを、自分で選び、終わったら自分で元の場所に片づけるところまで自然にできるように導いていきます。子供はただ遊んでいるよりも、「目的をもったお仕事」の方が夢中になって行うとモンテッソーリは言っています。
例えば乳幼児期に、ティッシュボックスのティッシュぺーパーや本棚の本を次々と抜き出していくのに夢中になる時期ってありますよね。もう少し大きくなると、書くものがあればどこにでもダイナミックに絵を描いてしまったり。
きお太がまだ赤ちゃんのころ、おとなしくしているなぁというときに限ってこんなことをしていました。大人としては「またやってる!ダメっていってるでしょ~。」などと言ってしまいたくなりますが、実は子供にとってはただ意味もなくいたずらしているのではないのですよね。
これは感覚の敏感期という、成長にあたって大切な時期なのです。そんな時期には、あれはだめ、これもだめと子供が触りたいものを片っ端から取り上げていくのではなく、子供がやりたい動作を満たせる教具を使って、指の感覚を存分に気の済むまで味わわせてあげるのです。
それによって指先の器用さや、日常生活で必要な動作も自発的に学んでいくのです。
ですが、だからといって物は大切に使わなければならないので、好きなだけティッシュやトイレットペーパーで遊ばせるわけにもいかないですよね。壁の落書きもしかりです。でもこういった子供の行動から、その子が今どんな敏感期を迎えているのかを大人が気づくチャンスなのです。
モンテッソーリが提示する、子供の成長のチャンス4つの「敏感期」
子供が成長する機会となる敏感期にはいくつかの段階があり、モンテッソーリでは「運動の敏感期」「感覚の敏感期」「言語の敏感期」「数の敏感期」と分けて考えています。
さらに、これらを学んだことを活かして興味の範囲を広げていき、歴史や地理、植物など、こどもの「もっと知りたい!」という欲求を育て、伸ばしていくことを目的としています。
教具を使って遊ぶ姿は、はたから見ればただ黙々と遊んでいるだけに見えるかもしれません。ですがこれは、子供が自立した生活を営んでいけるようになるためのだいじなお仕事なのです。そして大人はその時々で必要な教具を「与える」のではなく「提示」して、選ぶのは子供なのです。そうやって子供の自主性、自立心をはぐくんでいきます。
モンテッソーリ教育については様々な本が出ているので、詳しく知りたい方は一度読んでみることをおすすめします。
最近は漫画版も出版されて人気があるようですよ。
我が家の近くの図書館では、モンテッソーリ関連の本がなんと全て貸し出し中で、先日予約をしてきたところです。予約は複数人待ちなので、時間がかかるとのことでした。モンテッソーリの教育についてお母さんたちの関心の高さがうかがえますね。
モンテッソーリの教育については、こちらの記事も参考になりますよ。
モンテッソーリ教育を受ける「デメリット」
モンテッソーリ教育は、子供の意思を存分に尊重した、とてもきめ細やかな教育法です。ですが、どうやらデメリットがいくつかあると言われているので、その理由を突き詰めてみようと思います。調べてみたところ、モンテッソーリ教育のデメリットには、大きく分けて2つの種類があることがわかりました。
まずは1つめの、モンテッソーリ教育を受けることによるデメリットについて調べてみました。
一般的に良く言われているのは以下のようなものがあります。
これをひとつひとつ検証していきたいと思います。
モンテッソーリ教育のデメリット【協調性のない子が育つ?】
モンテッソーリ教育の理念の中に責任感と他人への思いやりがあります。モンテッソーリ教育を行うこどもの家では、異年齢の子供たちでクラスが編成され、年上の子供が年下の子供の面倒を見たりします。
実際にモンテッソーリ教育を受けた子供の保護者からはこのような声が届いています。
「年下の子の面倒を上手に見る」
「困っている人や弱者に優しい」
「できない子にはわかるように教えてあげる」
このように社会性が身に付いているという話も聞かれています。
ではどうして協調性のない子が育つとか、わがままに育つのでは、と言われてしまうのでしょうか。
モンテッソーリ教育の現場で「お仕事」は椅子にすわり静かに行うことが多く、子供たちは集中して取り組んでいるため、その姿だけを見ると、「一人で黙々と作業ばかりしていて、他の友達と上手に遊べなくなるのでは」という懸念を感じてしまう親御さんもいるのです。
またモンテッソーリ教育を受けた子供は自分をしっかり持っていて他者に流されない傾向があり、はっきりと意見を述べたり、間違っていることは間違っていると指摘したりするので、それを協調性がないと思われることもあるようです。
ですが、そもそも協調性というのは「他人に合わせる」ということとは違うのではないでしょうか。しっかり自分を持っているからこそ、真の意味で他者と向き合い関わることができ、本当の人間関係がはぐくめるのです。
表面だけをとらえ「この子は協調性がない」と安易に決めつけてしまうのは、その子が潜在的に持っている良さを伸ばしてあげられない危険性があります。大人は子供の一部だけを見て簡単に判断を下さず、じっくり観察することが大事だとモンテッソーリは言っているのです。
また、はっきりを意見を言うことで相手を傷つけてしまったとき、次からは傷つけないように伝える方法もちゃんと学んでいきます。学べる力も培っていくのです。
モンテッソーリ教育のデメリット【運動不足になる?】
モンテッソーリ教育では、きちんとした姿勢で座り静かに作業を行うことが多いので、運動不足の懸念をするご両親もいるようです。ですが、モンテッソーリ教育をするこども園や幼稚園・保育園では、一日中椅子にすわってお仕事をしているわけではありません。
外に出て遊ぶ時間を設けている園もありますし、ちゃんと体を動かして遊びます。現にモンテッソーリ教育を受けた子は運動能力が高いという報告も多数あるのです。
大人の行動をしっかり観察する力が備わっているので、例えば体育の先生の動きなどもしっかり落ち着いて見て、次に自分が真似をしてやってみるときに、上手にすることができるのだそうです。
それでも、幼稚園・保育園の中には運動・体力づくりに力を入れている園もあり、そういった園と比べたら運動量が少ないと感じるかもしれません。我が家は、土日は家族でアウトドアを思いっきり楽しんで家族みんなで体を動かしています。友人の中には、大好きなサッカーを習っている子もいます。
モンテッソーリ教育を取り入れた園に限らず、どんな幼稚園・保育園でも、そこに通ってさえいれば勉強も運動もすべてを網羅できるということは、なかなか無いでしょう。
もし子供の運動不足が気になるのであれば、ご家庭でも、普段から公園に連れて行って思いっきり遊ばせたり、休日には家族でアウトドアを楽しんだりと、様々な工夫をしてみてはいかがでしょうか。きっと家族の絆も深まり、またそれが子供の成長へとフィードバックされることでしょう。
モンテッソーリ教育のデメリット【小学校にあがったとき、周りに順応できない?】
モンテッソーリ教育の中で一人で黙々と教具を使ってあそんで(学んで)いた子供たちは集団生活に馴染めない、浮いてしまうのではという懸念を抱く保護者も多いです。ですがモンテッソーリの教育理念は社会性のある人間を育てることであり、実際にモンテッソーリ教育を受けた親御さんの中には、
「自分から友達を作る」
「新しいクラスになったとき、自分からたくさんの友達に話しかけて仲良くなれた」
「友人間のゴタゴタやいじめにくじけず冷静にうけとめ対処できる」
「全体を見渡して人の意見をとりまとめるのが得意」
などの意見が多数寄せられています。
小学校にあがったときにクラスに馴染めないということは、モンテッソーリ教育を受けたか受けないかにかかわらず、多くのお子さんにみられる悩みではないでしょうか。
私の友人の息子さんは、1クラス14人の少人数性の保育園に6年間通っており、その後、1学年100人以上いる大規模な小学校に入学しました。少人数でのんびり過ごすことに慣れていた友人の息子さんは、初めは圧倒され戸惑い、うまく馴染めずにいました。
保育園時代には出会うことがなかった、ちょっとやんちゃなお友達に気圧されることもあり、学校に行くことがいやになってしまった時期もありました。
でも、大人が思う以上に、子供は順応力があります。やがて、やんちゃと思えたお友達ともうまく付きあい仲良くできるようになり、今では小学校生活を満喫しているそうです。
モンテッソーリの教育を受けた子供は順応性が高く、問題解決能力もはぐくまれています。小学校に入り、最初はつまづくことがあっても、きっと自分の力で解決していくはずです。
もちろん、このようなときも親の観察が大事で、「手出し・口出し」ではなく「手助け」となる導きを心がけることはとても大切になってきます。
モンテッソーリ教育を受けられない「環境面での懸念点」
モンテッソーリ教育を積極的に取り入れたいと思っている人にとっても、環境的な面での懸念点も考えられます。
このような環境的な側面の懸念点についても、ひとつずつ掘り下げてみます。
モンテッソーリ教育に関する懸念点【取り入れている園が近くに無い】
モンテッソーリ教育をぜひ我が子にも受けさせたいけれど、近くに無くて残念に思っている保護者もいることでしょう。その場合、モンテッソーリ教育を受けられるこどもの家の近くに引っ越したり、通園時間がかかっても、頑張って送り迎えをするというのもひとつでしょう。
でも、現実的になかなかそうはいかないことの方が多いですよね。そんな方には、モンテッソーリ教育勉強会てんしのおうちがありますよ。ご自宅の近くにてんしのおうちがあるか、ぜひ調べてみてください。
幼稚園・保育園のように毎日通うことができなくても、定期的に勉強会へ通うことで、モンテッソーリの教育方法を正しく取り入れる道が開けることでしょう。
てんしのおうちも通える範囲には無い、また通う時間が取れないという方は、家庭でもできるモンテッソーリ教育を紹介している本が出ていますので、ご自宅で実践してみるのもおすすめです。
家庭内だけでモンテッソーリ教育を取り入れるのは難しいと思うかもしれませんが、全てを網羅できなくても「これなら我が家でも取り入れられそう」という部分だけピックアップして実践してみるだけでも、きっと価値はありますよ。
モンテッソーリ教育に関する懸念点【園によって教育の質が異なる?】
特殊な教具を用いるモンテッソーリ教育を取り入れた幼稚園・保育園では、教員も特殊な訓練を積んで教育にあたります。日本では、まだモンテッソーリ教育がそれほど浸透しておらず、設備を整えて指導者を育てるのが難しいという現状があるようです。
また、園によっては教員の知識が浅かったり、ただ教具が置いてあるだけで十分に活かし切れていないところもあるといいます。
同じ園内でも、先生によってモンテッソーリの理解度に差があり、子供への対応のしかたにムラがでてしまうケースもあるというのです。これではせっかくモンテソーリ教育を取り入れた幼稚園・保育園に通っても甲斐がないですよね。
これは、モンテッソーリではない普通の幼稚園・保育園にも言えることですが、その園の方針を、末端の先生方が深く理解をしていないために、園の特色である教育を子供がじゅうぶんに受けられない、ということがまれにあります。
もちろん、日々熱心に取り組み子供と向き合って活動している先生がほとんどなのですが。大切な我が子ですから、入園後は生き生きと楽しく園生活で学んでいってほしいですよね。入園を検討する際は必ず見学をして、先生方のお話もしっかり伺って、園内の保育の様子や環境を事前に確認しておくことが大事です。
モンテッソーリ教育に関する懸念点【幼少期に身に着けた自律性が小学校進学後に消失?】
欧米では大人(24歳)になるまでモンテッソーリの一環した教育の実施が受けられますが、日本ではほとんど、幼児期のみしかモンテッソーリ教育を受けられる機会がないのが現状です。日本では、モンテッソーリ教育を受けられる小学校がないため(正確には国内に2校ありますが、国に認められていない認可外校という扱いです)、幼児期にせっかく身に着けた自律性などがなくなってしまうといった懸念もあるようです。
小学生になってもモンテッソーリ教育を受けさせたい場合、放課後にモンテッソーリ教育を受けられる、こどもの家小学部があるので、塾のような形で通うことはできます。
せっかくモンテッソーリ教育を通して幼児期に身に着けたものをその後も活かしていけるよう、親も最大限できることをして見守ってあげたいですよね。ただここも、通えない方には利用できないのがデメリットとも言えます。
またモンテッソーリの幼稚園では異年齢の子供たちが同じクラスで活動しますが、小学校へ上がったとたん、クラス仲間が同い年のみになるという環境の変化に戸惑うのでは?という不安もあるようです。
これについては、関わる年齢層が急に広がるのではなく狭まる分には、子供はあまり気にならないようで、特に心配する必要はないでしょう。小学校へ上がったときに子供たちが順応できるように、配慮してくれている園もあるようですよ。心配なら、園の先生方に相談してみると良いでしょう。
モンテッソーリ教育はお受験のための教育法?
よく、モンテッソーリ教育を受けさせている、というと、「お受験を考えているのね」と言われることが多いといいます。実際、モンテッソーリ教育を受けている子供は受験に受かりやすい傾向にあるという結果も出ています。
モンテッソーリ教育の現場では、きちんとした姿勢で座ってお仕事(教具を使ったあそび)をするので、子供たちは落ち着いて座って、物事に取り組むことに慣れています。集中力もあります。
それが結果的に、お受験に合格しやすい子供になっているのですが、決して受験に受かるための教育ではなく、あくまでも「自立した生活のできる、生涯学び続ける姿勢をもった人間」に育てることがモンテッソーリの目的なのです。
お受験を考えているご両親で、モンテッソーリ教育をうけさせている方もいますが、その親御さんたちも、お受験合格すること自体が目的なのではなく、お受験や、目指す学校で学ぶことを通して子供の人間性を育ててあげたいと願っていると思うのです。
「お受験」という言葉だけが一人歩きしてしまっている現状が時々見受けられますが、根底には、我が子を心も体も豊かに育ててあげたいという願いがいつだってあるのですよね。
子供の教育についてこんな記事もありますので参考に。
まとめ
モンテッソーリ教育がもたらすデメリットについて調べてきましたが、モンテッソーリ教育とはどういうものなのかを深く知らないことからくる不安も多いと感じました。きちんと調べて理解を深めたり、ご家庭で工夫することで解決できるデメリットもたくさんありましたね。
どんなに素晴らしい教育法でも、その幼稚園や保育園に任せておけば全て安心、ということはありえません。ご家庭でも両親がしっかりと子供を観察・サポートして、園と家庭両方で連携を取りながら子供をより良い方向へ導いていけたらベストではないでしょうか。