今の日本には、いろんな教育方法が入ってきてますね。
モンテッソーリ、シュタイナー教育…どれも有用な教育法ですが、その中でレッジョ・エミリア・アプローチってご存知でしょうか。
そうそう、あの世界で注目されているアレです。
グーグルさんとかディズニーさんの会社の付属幼稚園でも取り入れられてる教育として有名ですね。
レッジョ・エミリア・アプローチでは、プロジェクト活動、美術の専門家もついた創造活動、ドキュメンテーションという、3つの特徴がありますね。あるんです。
今回はその中のドキュメンテーションについて、掘り下げて詳しく見ていきましょう。
目次
レッジョ・エミリア教育でやっているドキュメンテーションてなに?
まずレッジョ・エミリア・アプローチの一つ、ドキュメンテーションとはなにか。
これは、子供たちや保育士の会話や活動の様子、活動内容などあらゆることを記録して、みんなが見られるようにする取り組みです。
写真や作品を飾ったり、動画を撮影して流したりします。
子供たちや保育士だけじゃなく、保護者や地域の人たちにも見られるように提示して、コミュニケーションが生まれやすくする目的もあるようですよ。
ふつうの幼稚園や保育園だと、記録は保育士と保護者だけで共有するとか、保育士さんの仕事上で使われる事務的なものですが、レッジョ・エミリアのドキュメンテーションでは子供たちも記録を活用できて、それを次の学びに活かせるメリットがあります。
レッジョ・エミリア・アプローチでは、子供、保育士、保護者は対等の関係で、大人も子供も一緒に活動するのが大事だと考えられているのです。
だから日々の活動の記録や作品は、たくさんの人に見える形にして、共有するのですね。
ある人がレッジョ・エミリア教育をやっている現場に取材に行った話では、(人の取材でごめんなさい)とにかく子供たちの活動の様子を写真や動画に撮り続けていたそうです。会話もしっかり録音していたとか。
その撮りまくった写真や動画などをもとにして、週に一回の「ミーティング」で活動内容について話し合いをするのだそうです。
活動の展開が適切なものであったか、とか議論し合うんですって。頭がよくなりそうですね。
で、子供たちが興味を持った事柄については、その活動の記録をパネルやボードなどに貼ったり、いろいろな方法で提示します。
保育士さんたちは、子供たちの反応を見ながら、子供たちの興味ある活動は発展させて、関心が薄いものは違う活動に変えるんだそうです。
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レッジョ・エミリア教育、ドキュメンテーションの効果
じゃあドキュメンテーションをやったらどんないいことがあるのか。
まず子供たち自身にとっては、自分の考えや思っていること、発言に対して保育士さんや親など、周りの大人たちが関心を寄せてくれる。そして自分の意見を尊重してくれるので、自信がつくのです。
それによって、物事をより深く観察したり、考えたりして洞察力や思考力が養われます。
過去にやった活動から、自分がやろうとしてたことや、その時にどう考えていたのかがわかって、それが次の活動の資料になるので、学びも効率的になりますね。
ドキュメンテーションをやることで、子供たち同士で話し合う機会が増えるから、意見の言える人間、人の話を聞ける人間に育ちます。
このスキルは大人社会ですご~く大事ですからね。
よく「コミュ障だ〜」とかいいますが、小さい頃に周りから認められる経験や、人と話し合う経験があればコミュ障にもなりにくいのではないかという気がします。
※「コミュ障」…「コミュニケーション障害」の略称。
仕事上の事務的なやり取りよりも、友人との他愛ない会話が苦手、苦痛と感じる症状の総称で、幾つかの系統に分かれて定義され、現実社会で精力的に活動する「リア充」な人よりも、ネットワーク社会で活躍する「ネト充」な人に多いとされる。
あと、ドキュメンテーションのいいところといえば、保護者や地域の人にも活動の内容、様子がわかるので、今子供たちは何に取り組んでるのかな〜とか、どんなこと考えてるのかな〜っていうのが可視化されます。
そのため、子供たち、保育士、保護者、地域の人の交流がされやすくなり、周りの大人も保育に参加することが容易になるという効果もあります。
レッジョ・エミリアをおうちで!ドキュメンテーションをやってみよう
レッジョ・エミリアの教育、ドキュメンテーションがいいのはわかったけどその教育をやってる施設なんて近くにないわよ!とお怒りのあなた。施設のように完璧にやらなくても、自宅で取り入れればいいのです!
自宅で取り入れるって、じゃあ何からやればいいの?ということで、おうちでドキュメンテーションをやる場合を考えていきたいと思います。
ドキュメンテーションとは記録です。
過去の記録から子供は次なる活動に活かして学び、大人は子供の興味や能力、考えていることを知って、指導の参考にしていきます。
指導といっても、レッジョ・エミリアの考えでは「子供も大人も対等で、仲間!」ということなので、助言、と言ったほうがいいのかもしれませんね。
具体的にやることは、ホワイトボードやコルクボードなどにお絵かきしたものや、作った作品を飾ったり、作業風景の写真を貼ったりします。
その時の会話をメモしておいて、写真と一緒に会話の内容を貼っておいてもいいですね。吹き出しみたいにして。
タブレットがあれば、動画を流してみたりすると、子供も興味を持って見るのではないでしょうか。
ドキュメンテーションとして、子供と一緒に料理をするのも一つの手です。
お菓子作りなど良さそうですね!お菓子作りに興味ない&難しかったら、簡単な料理でもいいです。
料理しているところを写真や動画に撮って、料理が出来上がったら一緒に食べながら話し合いもできます。
レッジョ・エミリア教育を取り入れている保育園でも、給食の写真とレシピを置いていて、自宅でも作れるようにしているところもありますよ。
おもちゃは、車やぬいぐるみなどの決まった形があるものより、積み木や粘土、その他家庭から出るトイレットペーパーの芯とか、新聞紙とか、オープンエンドのものが良いです。
オープンエンドとは、おもちゃや遊びに関して言うと、「遊び方が何通りにもなる」ということです。
積み木も粘土も、子供によって、遊び方によって、いろんな形に変化していきます。パズルのように、一つの答えではないということですね。
オープンエンドの遊びをしていると、想像力、創造力が育ちます。
そして、大人は子供が作っているものに問いかけたり、話しかけたりすることが大事だといいます。
そうすることで、子供は「自分が作っているものは価値のあるものだ」と気付き、自信がつくのです。
それを繰り返していくと、だんだん取り組む時の集中力も高まっていき、クオリティも高いものになっていきます。
積み木、粘土、新聞紙、ダンボールなど、オープンエンドおもちゃになりそうなものはたくさんありますが、かと言ってドサドサと大量に出すものではありません。レッジョ・エミリアの教育方法では、一度に出すおもちゃは、3つぐらいに限定することを薦めています。
出したおもちゃが気に入らないようであれば、どれがいいのか子供に選んでもらいましょう。
レッジョ・エミリア教育による実際のドキュメンテーション
自宅でも実践可能なレッジョ・エミリアのドキュメンテーションですが、保育の現場ではどのように記録しているのでしょうか。実際に、レッジョ・エミリア教育の現場のドキュメンテーション資料を発見しました。
レツジヨ・アプローチによるドキュメンテーションの実例検討(伊東)
2. 1 「マグネットがいっぱい1」色・形・数に関する知識の構築 一フェリックスとエレーナ 2011年8月17日水曜日一
エレーナは来てすぐにライトテープルの脇にいるフェリックスのもとに直行し た。四角や三角などの異なる形を見ながら、エレーナは「丸のかたちはないの?」 と尋ねてきた。しかし、丸の形がないと知ると、彼女は自分で丸を作り始めた のだ。彼女が三角形をつなぎ合わせれば円を作れる、という直感を持っていた ことに私は驚いた。 エレーナ:私は丸を作ったよ。今度は丸を分解していくの。 フェリックス:僕は四角を集めてる。これってマグネットなんだ。マグネット がいっぱい1 エレーナは、円を作るために組み合わせた三角形をひとつひとつ指さしながら 言った。 エレーナ:青、だいだい、緑、だいだい、だいだい、緑。 フェリックス:これとこれは同じ色だ。 (だいだい色の三角形を2つ指し示し ながら) エレーナ:数をかぞえたいの? エレーナは三角形を指さしながら、フェリックスは指折りしながら、 2人で数 を数え始めた。フェリックスはエレーナが形を作るのに使うようにと、三角形 を1つ手渡そうとした。 エレーナ:それいらない1 フェリックス:そんなこと言うなよ1 ケンドラ:エレーナがどれが欲しいか教えてくれるわよ・言ってくれなくちゃ どれが欲しくてどれがいらないかわからないわよね。
フェリックスは大きな四角形を立てて組み合わせると、 「僕も丸を作ったよ!」と言った。エレーナは「私はフェリックスのとは違う 丸を作ったの」と言うと、工程をひとつひとつ説明しながら、再び円を作りだ した。
このドキュメンテーションは、子どもたちの考えとそこに至る探求のプロセ スを、子どもたちの発言を克明に記述することによって表現している記録であ る。まず、エレーナの「円を獲得するために三角形をつなぎ合わせる」という 直感的な思考を読み手は理解することができる。もし、記録がなかったらどう だろう。私たちや親はマグネットの積み木で遊んでいる子どもの遊びの意味や 価値を知ることはできないはずである。子どもの傍らにいて、子どもたちの言 葉や行動に敏感に目と耳を傾けて観察する保育者の記録があって、初めて気づ くことができるのである。
細か~く書いてありますね。
でも確かに、こうして見てみると子供の思考や能力など、記録したことによって気がつくことがたくさんありますよね。
普段ならただ遊んでる~って流しちゃうところですが、この資料からは「いかにドキュメンテーションが大切で意味のあることか」がわかります。
大人から見たらただ遊んでるように見えるけど、子供たちの世界に深く入っていくことによって、それぞれの子供の世界観、直感力、思考力がわかりますね。
記録をとっていくうちに、この遊びはこんなことが学べるな、次はこうしたらどうだろう?とか、子供たち同士のコミュニケーションでは、お互いに自分の意見が言えるようになってきたし、人の話も聞けるようになってきたな。こんな話もできるんだ!など、いろんな発見があって、大人側からしても、子供への次のアプローチに繋げていくことができます。
子供って、日々すごい勢いで成長しているので、その成長ぶりにハッとさせられることがよくあります。
いつの間にそんな知識覚えたの~⁈とか。それを近くで観察して、動画なり録音なり、記録を取り続けるのも面白いかもしれません。
まとめ
- レッジョ・エミリア教育の特徴の一つ、「ドキュメンテーション」とはどんな活動なのか。
- レッジョ・エミリアのドキュメンテーションによる効果とは。
- レッジョ・エミリアのドキュメンテーションを自宅でやってみよう。
- レッジョ・エミリア教育でやってる実際のドキュメンテーション
ドキュメンテーションすることによって、子供たちだけではなく、大人にとっても、たくさんの気付きや学びがあります。
もちろん子供たちは、記録をもとに過去から学び、改善したり、工夫したりと、どんどん成長していけます。
レッジョ・エミリアで実践しているドキュメンテーションは、大人にとっても、子供にとってもとても重要な意味をもつものなのですね。
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