【連載:おうちモンテ】観察のポイントとは?元講師が実践、おうちモンテの始め方②!【モンテッソーリ】

ざっくり言うと

  • モンテッソーリ教育のベースは「環境」と「観察」。「観察」はおうちモンテ成功のカギ!
  • 「環境」が整っていれば、旬は2週間程度で終わってしまう
  • 「観察」のコツは、”何””どこ””どの部分”

ここ数年で一気に一般的になったモンテッソーリ教育。評判のよいお教室を検索したり、体験教室に行かれたりした方も多いのではないでしょうか。高い月謝を払ってモンテッソーリのお教室に通うのではなく、「おうちモンテ」としてモンテッソーリ教育を取り入れようかな、という方も多いと思います。

本連載では、実際にモンテッソーリ系の乳幼児教室で講師していた私が、自宅で息子たちに行っていた、おうちモンテの取り入れ方を紹介しています。前回は「環境の整え方」についてお伝えしました。第2回目の今回は「子どもの観察のポイント」をお伝えします。

大人の役割はたった2つ

モンテッソーリ教育において、大人の役割は、子どもに教え込むことではなく、「子どもを正しく理解」し、「適切な環境を用意」し、「子どもと環境を結び付けるように援助する」こととしています。ざっくりと言えば、「子どもを観察」し、「環境を整えること」、このたった2つの役割こそモンテッソーリ教育のベースとなっています。

モンテッソーリ教育では自己教育力といって、子どもたちは自分で自らを教育・発達させていく力を持っており、この「自己教育力」により、子どもはそれぞれの必要な時期に、自分自身に必要なことを、自ら行うという考えです。特に、ある能力を発達させるために、同じようなことを繰り返し行う、ブームのようなものがある時期があります。これをモンテッソーリでは「敏感期」と言い、この敏感期に適切な環境を整えることが大人の最も重要な役割の一つになっているのです。

今回の記事では、敏感期のことを少しなじみのある「旬」と言わせていただきます。食べ物の旬と同様に、敏感期の旬を外れてしまっても悪いわけではありません。ただやはり、旬な時期の方が能力を身につけやすく、吸収しやすいというのは間違いないので、旬を逃さないようにしたいですね。特に、先生のいないおうちモンテでは旬を見逃さないために親御さんの「子どもを観察する力」がより重要になってきます。

おうちモンテでは観察により旬を見極め、その旬を反映した環境に整え直し、また観察をする、その繰り返しです。むしろ、おもちゃ棚などスペースに限りがあるため、おうちモンテではお教室以上に旬をしっかりと見極める必要があると思います。

観察のポイント

では、旬はどうやって判断したらいいのでしょうか。旬なことをやっているときの反応として「とても集中している」、「目がキラキラする」、「繰り返し何度も行う」という特徴があります。今回はお教室で親御さんにしていた質問を通して、旬を見つけやすくなる「観察のポイント」をお伝えします。

「最近どんなことをして遊ぶのが好きですか?」「困っている行動はありますか?」

まずは大まかに見ていきましょう。車のおもちゃで遊ぶのが好き、エコバッグを持って家の中を歩くのが楽しそう…など、最近お子さんが楽しく遊んでいることを考えてみて下さい。なかなかピンとこないなぁという方は、逆に困っている事を考えてみて下さい。ティッシュやおしりふきを全部出してしまう、ごはんをぐちゃぐちゃにして遊んでしまう…など意外と出てくるかもしれません。まずはお子さんが自発的によくしている行動を考えてみて下さい。

「最近、このおもちゃでばかり遊ぶんです。」と親御さんから心配そうに相談されることがありますが、それこそ【旬】敏感期です!最近コレばっかりする…と思ったら、旬が来たのかもしれない!と意識して観察してみましょう。

今回は“ティッシュやおしりふきを全部出してしまう”という困りごとを例に考えていきたいと思います。

「それをしているとき、お子さんはどこを見ていますか?」

ティッシュやおしりふき、一度出してしまうと戻すのも大変なので、やめて!と止めたくなりますが、まずは観察してみましょう。一生懸命引っ張り出しているお子さんは、どこを見ていますか?繰り返し行っている顔、特に視線に注目して観察してみて下さい。子どもは小さな研究者。何かに興味をもって、それを探究しています。何を不思議に思ったんだろう?と研究者であるお子さんの考えを想像してみてください。

お子さんが見ているのは、引っ張り出しているケースでしょうか?引っ張っている手でしょうか?出したあとのシートでしょうか?まず止めたくなってしまいますが、一度ぐっと我慢して、どこを見ているのか静かにみてみましょう。

「夢中になっているのは、どの部分でしょうか?」

どこを見ているのか、視線の先を見つけることができたら、最後にもう一度お子さんの表情や瞳を観察しましょう。ぐっと引き込まれるような様子、面白いものを見つけた!と瞳がキラキラと輝くのは、どの瞬間でしょうか。

例えば、引っ張り出した後の箱を見ているのは、引っ張ったはずなのにすぐ次のシートが出ていることを不思議に思っているのかもしれません。一体いくつ入っているのかな?と限界に挑戦しているのかもしれません。それとも“掴む→引っ張る“という動き自体が楽しく、体を自分の思うように動かすトレーニングをしているのかもしれません。はたまた、引っ張り出した1枚1枚の感触が楽しかったり、ふわりと落ちる様子が面白く、何度も繰り返してその様子を見ているのかもしれません。

お子さんが夢中になっているその部分こそが、旬なものです。ティッシュなどの困ってしまう物ではなく、似たような動き・感覚のものをおもちゃに加えて、やりたい時に出来るように環境を整えてみてください。

 このように『ティッシュを引き出す』という動きの例でしたが、「全部出したいという好奇心」「指先や腕の運動」「感触を楽しんでいる」という3つの違う旬の可能性が見えてきましたね。お子さんによっては、この3つでもない違った部分に夢中になっているかもしれません。 

日々観察していると、「あれ?ティッシュも引っ張るけど、パーカーの紐も引っ張るなぁ。もしかしたら「引っ張る」という動きが楽しいのかな?」と共通する部分が見えてくるときがあります。そういう重なる部分が旬(敏感期)であることが多いですよ。

「最近このおもちゃ好きなんだね」で終わることなく、なんで好きなんだろう?どの部分が気になるのかな?と徐々に細かな部分を観察してみてください。観察ができるようになると、おうちモンテとして整えた環境をお子さんが楽しんで使ってくれるようになりますし、子どもの気持ちが少しずつ見えるようになり、おうちモンテに限らず、子育てがグッと楽しくなりますよ。

旬は思っているよりも短い

【旬】は気になって仕方がない、その動きがやりたくて仕方がない時期なので、困った行動に繋がりやすい時期でもあります。観察によってコレだ!と思うお子さんの【旬】を見つけたら、その旬なことが気の済むまで出来る環境を用意することをおすすめします。先にその動きをしてもいい場所、道具を用意しておくことで、大人も安心して見守ることができますよ。

例えば、「引っ張る」が楽しい時期なら、色々と引っ張れるものをおもちゃ棚に用意してみましょう。ミルク缶の蓋に小さな穴をあけて、紐を通してみるだけでも良いですし、もっと簡単なものなら布メジャーを渡してみてもOKです。引き出す時のカチカチという音も心地よく、息子も大好きでした。お出かけセットの中に入れてもいいですね。 

実は【旬】は気の済むまで出来る環境があると、子どもたちは一気に吸収していき、2週間程度で終わってしまいます。同じおもちゃでずっと集中する子もいますが、多くは観察の「どの部分」が少しずつ変化しているはずです。そのため、用意する物も想像の倍くらいの速さで入れ替わっていきます。【旬】は短期集中を意識しましょう。そのため乳幼児期の特に旬に対応するような物は、高価なおもちゃではなく、気兼ねなく入れ替えることができる安価な物の方がいいかもしれませんね。

おうちモンテの成功のカギは「観察」

モンテッソーリ教育は子どもの「自己教育力」を存分に発揮する教育だと言えます。大人は、子どもの発達段階に合わせて、より自己教育力を発揮できる環境に整えるだけで、教え込むということは行いません。子どもたちが自分で成長していく、それを見守るサポート役なのです。

本などで子どもの発達を学ぶのも良いと思いますが、教科書的な知識では個人差もあり、全てが当てはまる正解はないと思います。お教室で見ていた生徒さんも、同じように育てている我が子ですら、好みだったり個性だったりで、気になるものもその度合いも少しずつ違います。そのため本や知識を参考にするよりも、目の前のお子さんを「よく観察し、その子の状態に合わせた環境を整えること」が最も大切になります。環境を整えるためにどれほどお子さんを観察できるかがカギになってきます。

慣れてくると自然と「観察」が出来るようになってきますが、慣れるまでは思わず口や手が出てしまったり、ピタリと旬を見つけることが難しいかもしれません。まずはお子さんが遊び始めたら、子どもの行動>子どもの視線>夢中になるポイントと徐々に細部に焦点を当てていくようにしましょう。お気に入りのおもちゃや遊びができた時、その「おもなのではなく、そのおもちゃの「どこ」が好きなのかを意識して観察してみましょう。

コレだ!という旬が分かってくると、お子さんの吸収の早さに驚き、おうちモンテの楽しさに気付けるはずです。おうちモンテのおもちゃや教具はあるけれど、何かうまくいかないという方は、まずはゆっくりと遊んでいるお子さんを観察してみましょうね。

次回は、お腹の中から始まっているとも言われる【言語の敏感期】についてお伝えしたいと思います。うまく使えば語学学習にも良い影響が出てくる敏感期なので、英語学習気になるよという方は、ぜひ読んでみてください。