レッジョ・エミリアといえば!
皆様はご存知ですか?イタリアの小さな町ですね。
町だということよりも、ここから発祥した幼児教育アプローチの方が有名かもしれません。
グーグル本社の付属幼稚園や、アメリカディズニーに付属する本社社内幼稚園でも取り入れられているなど、この「レッジョ・エミリア・アプローチ」は今、世界で注目を集めています。
日本でも、保護者や保育士の間で関心が広まっていて、このレッジョ・エミリアの幼児教育を取り入れ、実践している施設も増えつつあるのです。
そこで今回は、注目されているレッジョ・エミリアの幼児教育アプローチについて、レッジョ・エミリア・アプローチという幼児教育はどんなものなのか?レッジョ・エミリア・アプローチの魅力やメリット、自宅でもできるのか?を見ていきましょう。
レッジョ・エミリア・アプローチの幼児教育はこんな風に始まった!知られざるその背景の物語

レッジョ・エミリア・の幼児教育アプローチは、第二次世界大戦後、イタリアの北部に位置するレッジョ・エミリア市で始まりました。戦後の復興を志し、まずは幼児教育に力を入れようと、町の人々や親たちが、専門家や教育者と一緒に立ち上げたのが、現在「レッジョ・エミリア・アプローチ」と呼ばれる幼児教育方法です。
彼らは、ナチスドイツが残していった戦車や軍用機などを解体して、くず鉄などにして売り、資金を調達しました。そして、レンガを一つ一つ焼いて自分たちで学校を作っていったのです。

この取り組みはなかなかスムーズにはいかず、学校ができるまでには長い戦いがありました。
時間はかかったけれど、1963年、ついにイタリア初の公立幼児学校がレッジョ・エミリアで誕生します。
それから時を経て、1991年の「世界で最も優れた10の学校」に選ばれた学校が、このレッジョ・エミリア・アプローチを実践していたことから世界的に注目される教育法となったのです。

この教育を起こしたのは、教育学者ローリス・マラグッツィという人です。
彼は、教育理論と発達理論を研究し、実践方法を考案したレッジョ・エミリア・アプローチのリーダー的な存在でした。
彼が書いた「子供たちの100の言葉」という詩はレッジョ・エミリア・アプローチの代表的な思想として有名です。
子どもたちの100の言葉(レッジョ・エミリアの保育実践について)
でも、百はある。
子どもには百とおりある。
子どもには百のことば 百の手 百の考え 百の考え方 遊び方や話し方
百いつでも百の 聞き方 驚き方 愛し方 歌ったり 理解するのに 百の喜び
発見するのに 百の世界 発明するのに 百の世界 夢見るのに 百の世界がある。
子どもには 百のことばがある(それからもっともっともっと)
けれど九十九は奪われる。
学校や文化が 頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう 目の前にある世界を発見しなさい
そして百のうち 九十九を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地 道理と夢は一緒にはならないものだと。
つまり 百なんかないという。
子どもはいう でも、百はある。ローリス・マラグッツィ (田辺敬子 訳)
この教育は、個人個人の意思を大切にし、子供の表現力や探究心、考える力、コミュニケーション能力などを養うことを目的としています。
個々の感性を生かし、自由な発想や表現ができるように様々な素材やツールが用意され、常に子供たちの発想力、創造力、コミュニケーション能力が高められるような教育環境が整えられているのです。
レッジョ・エミリア・アプローチには大きく分けて3つの特徴があります。具体的にどのようなやり方なのか、特徴を見ていきましょう。
レッジョ・エミリア・アプローチその1!専門家の指導あり?!芸術を重視した教育で創造性アップ

レッジョ・エミリア・アプローチの幼児教育では、美術専門家のアトリエスタと、幼児教育専門家のペダゴジスタというプロの人たちがスタッフとして参加していて、保育士と一緒に子供たちの創造性を豊かにする活動を支援しています。
子供たちには、「ピアッツァ」と呼ばれる共同広場や、「アトリエ」の場が用意されていて、遊びながら自由に想像力を高められる環境が整えられているんですね。

本格的なドラムセットや、リサイクル素材、パソコン、企業の廃材、ビーズ、自然の木の枝や小石など、色々な教材、素材があり、子供たちは常に自由な発想で表現活動ができるのです。


レッジョ・エミリア・アプローチその2!協調性と自主性を育てるプロジェクト活動

レッジョ・エミリア・アプローチの特徴的な活動のひとつとして、プロジェクト活動というものがあります。
これは、1つのテーマを数カ月〜1年という長期間にわたり、子供、保育士、保護者が一体となって掘り下げていく活動です。
例えば、展覧会に向けての作品づくりがあったとしたら、少グループで「何を、どのように作るのか」、「個人で作るのか、みんなで作るのか」などを話し合いながら進めていきます。
この時保育士は、指示を出すのではなく、対等に話し合いに参加して、保護者にも情報を共有します。
保育士や保護者はあくまで「一緒にプロジェクトを進めている仲間」なのです。



レッジョ・エミリア・アプローチその3!会話や活動を記録していくドキュメンテーション

保育士や子供の会話、活動の様子などを録音したり、メモしたり、写真や動画に撮って記録します。
それをパネルにして、誰もが見られる場所に設置する、という取り組みです。
この活動によって、「子供はどんなことに興味を持っていて、どういう活動をしているのか」が保育士や保護者にもわかり、記録した情報が、子供たちにとって次の学びに活かすきっかけとなっています。
また、地域の人たちや保護者にも見えるように提示されているため、施設内だけでなく、より広いコミュニケーションが生まれる仕組みになっているのです。
レッジョ・エミリア・アプローチでは子供、保育士、保護者は対等であるという考えなので、常に対等に話し合いをしたり、大人は子供に “教える” のではなく、子供と共同で活動に参加することが重視されます。

レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチとモンテッソーリ教育の違いは⁇
レッジョ・エミリア教育は、よくモンテッソーリ教育の内容と混同されたりします。レッジョ・エミリアとモンテッソーリの違いはなんでしょうか。
モンテッソーリ教育も、同じくイタリアで生まれた教育方法です。
レッジョ・エミリア・アプローチの教育目的は、「個々の意思を大切にしながら、子供の表現力、探求心、考える力、コミュニケーション能力を養う」ことです。
一方、モンテッソーリ教育は、「基本的な作業や学問を教え、基礎的なスキルを学び、自立することができる。 生涯を通じて学び続ける人間、思いやりと責任感を持ち、自立した人間を育てる」ことを目的としています。
レッジョ・エミリア教育においての大人の役割は、子供と対等な立場で「仲間」になること。
対してモンテッソーリ教育では、保護者や教師などの大人は、子どもの成長要求をくみ取り、自発的な活動を助ける存在という考えの違いもあります。
モンテッソーリ教育の特徴として、縦割りクラスや、独自の教具を使った「お仕事の時間」がありますが、レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチにはきっちりとしたクラス分けや、決まった教具などはなく、少人数のグループでプロジェクトを進めたり、自然のものや廃材で自由に遊んだりします。

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自宅でレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れてみよう

レッジョ・エミリア・アプローチの考え方、理念としては、子供一人一人の意思や個性、感性を尊重して、それを伸ばしていくことを目指しています。
「共に生きる」という考えのもとに子育てを行っていき、一人一人の能力は違っていて、それぞれに尊重されるべきということを念頭に置いて子供と接していきます。
では、レッジョ・エミリア・アプローチを自宅で取り入れるにはどんな方法があるのでしょう。
レッジョ・エミリア・アプローチ風ドキュメンテーションをやってみよう

ドキュメンテーションとは、会話や活動の様子を写真や動画、メモなどに記録して、いつでも見られるようにしておく取り組みです。
創作活動を中心とするレッジョエミリア教育では、活動内容を記録していくのも大事なプロセスですね。
では、おうちでこの「ドキュメンテーション」をやるにはどんな方法があるのでしょうか。
子供自身が、毎日の活動や生活を振り返ることができるように、ホワイトボードやコルクボードに写真、作品を貼ったり、創作活動中の様子を動画に撮って、タブレットなどで流すのもいいですね。
完成した作品について親子で話し合いをするのもいいかもしれません。
話し合うことで、次の制作に学んだことや気づいたことを活かせますよね。


レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチはここが大切!積極的に話し合いをしよう

レッジョ・エミリア・アプローチでは、一つのテーマについて長期間話し合いながら物事を進めていきます。
自宅で大きなプロジェクトはできなくても、例えば「〇〇に行こうと思ってるけど、どうやって行く?」とか、「週末はどこに行きたい?」とか、「それをするには何が必要?」とかの質問をして、話し合っていくのです。
あくまで親も子供も対等という考えが大切ですので、親の考えを押し付けないよう注意が必要ですね。
子供が悩んでしまったら、ある程度具体的な案を出して、それについてどう思うかを尋ねるといいでしょう。
少々根気がいることですが、子供ならではの視点で意外といい案が出てくるかもしれませんね。
子供とよく話し合いをすることで、既成概念で凝り固まってしまった大人の頭も刺激を受けるし、お互いにプラスになりそうです。
レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチはここも大切!抽象的な遊び道具を与えることで感性を磨く

レッジョ・エミリアの幼児教育では、決まった遊びをする為につくられたおもちゃではなく、自然のものやリサイクル素材、廃材などを使って自由に遊ばせています。
これを自宅で行う場合、家庭から出た廃材などを利用して、「これを使って遊んでいいよ」となるべく抽象的な状態で遊んでもらうようにします。


家の中にある牛乳や卵のパックや、いらなくなった服やタオルなどの布製品、ダンボールなどを使ってつくる「廃材アート」は家庭でも取り入れやすいかもしれません。家庭で出るもので遊ばせるので、お財布にも優しいですね。
子供が遊んで何かの作品を作ったら、ドキュメンテーションとして飾ってあげましょう。
まとめ
- レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチとは何か
- 創造性と芸術を重視した教育法
- プロジェクト活動で自主性と協調性を育てる
- 活動内容などを記録していくドキュメンテーション
- 自宅でレッジョ・エミリアの教育法を取り入れてみよう
芸術を重視した教育方法ですが、プロジェクト活動などで学んだ自主性や協調性は大人になってからとても大切なスキルになりますね。他にも、抽象的な遊びから得られる考える力や、過去の記録を次に活かす分析力なども鍛えられ、とても興味深い教育法です。
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