幼児教育のひとつ「レッジョ・エミリア・アプローチ」をご存じでしょうか。ディズニーやグーグルが社内保育園で取り入れるなど、いま世界的に注目されています。そんな話題の教育が日本にも上陸しているんです。
レッジョ・エミリア・アプローチを取り入れた活動は各地で行われていて、世田谷では市民が一緒に参加できるイベントを開催しています。無限の可能性を秘めている子ども時代に、できるだけ素晴らしい体験をさせてあげたい。
そんな話題の教育法レッジョ・エミリア・アプローチや世田谷での活動についてご紹介いたします。
レッジョ・エミリア・アプローチってなに
「レッジョ・エミリア」とはイタリアにある小さな都市の名前です。この地域で行われていた教育が「レッジョ・エミリア・アプローチ」と呼ばれ、1991年に「世界で最も優れた学校10選」に選ばれ広く知られるようになりました。
子ども達の100の言葉子どもたちの100の言葉(レッジョ・エミリアの保育実践について) 抜粋
でも、百はある
子どもには百とおりある。
子どもには百のことば 百の手 百の考え 百の考え方 遊び方や話し方
百いつでも百の 聞き方 驚き方 愛し方 歌ったり 理解するのに 百の喜び
発見するのに 百の世界 発明するのに 百の世界 夢見るのに 百の世界がある。
子どもには 百のことばがある(それからもっともっともっと)
けれど九十九は奪われる。
学校や文化が 頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう 目の前にある世界を発見しなさい
そして百のうち 九十九を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地 道理と夢は
一緒にはならないものだと。
つまり 百なんかないという。 子どもはいう でも、百はある。
ローリス・マラグッツィ(田辺敬子訳)
社会福祉法人 恵満生福祉会 河内からたち保育園 園長はこんな人
創造性の教育と環境づくり
レッジョ・エミリアは子どもの創造性をとても大切にする教育です。知識や技術を教えるよりも、子どもが持っている「感性」をかたちにする、言葉に変えるなど、自らを表現するプロセスを伸ばします。
表現することを通し、いろいろな角度から物事を捉えたり他人に伝える力が養われます。なんとなく気持ちをうまく伝えられずにモヤモヤするなんてことが減りそうですね。感性が柔軟な子ども達なら創造性もぐんぐん伸びそうです。
具体的にどのようなことが行われているか、岡山大学教育学部教授・芸術学博士の高橋敏之氏の講演内容を一部抜粋させて頂きます。
少し学術的な話になりますが、「見えないものを描く」について研究者達は、「主題の変奏」と言っています。C.Edwards, L.Gandini & G.Forman によると、「子ども達に、音を目に見える絵にし、目に見えるものを奏でる音にすること。こうしたことは、様式を交差した表現と呼ばれており、新しい見解と洞察という光をもたらす」。これが、日本の幼児教育にはない視点ですね。そして、「見えないことについて描くように励ますこと。なぜなら、そこから最も面白いアイディアと理論が現れる」。これが、レッジョ・エミリア保育実践の、創造性という大きな柱の背景にある理論です。研究者によっては「変換認知的学習」と言ったりもしますが、具体的には、「さっき食べたオレンジの香りを、絵や音で表現してみよう」といった保育になるの です。そういう保育を日常的にしています。
高橋敏之基調講演「北イタリア、レッジョ・エミリア市の保育実践に学ぶ」
この「見えないものを描く」「見えるものを音にする」などは、レッジョ・エミリア・アプローチの代表的な保育実践です。周りの大人達に励まされながら、子ども達は自由に発想をかたちにしていきます。
保育士以外にもプロフェッショナルな専門家「アトリエスタ」と「ペダゴジスタ」が配置されていて、保育士と協力しながら子ども達を支援しています。
- 美術の専門家
- 一つの園につき一人を配置
- プロジェクト活動やドキュメンテーション作成を子どもや保育者と一緒に行う
- 教育の専門家
- 一人が複数の園を巡回指導
- 保育者やアトリエスタに専門的なアドバイスを行う
そして、教育環境には独特の空間が作られています。まず、イタリア人の生活には欠かせない共同広場「ピアッツァ」が園の中にもあります。イタリアでは人々がピアッツァに集まり会話を楽しんだり情報共有したりする大切な場となっています。
⚓️ #Verona by #Day … ☀️
— BestTravelBook (@besttravelbook) 2018年7月31日
Walk across to pretty #Piazza delle #Erbe. Pull up a chair for a #cappuccino, and enjoy the #Italian sport of people-watching for a while.
📍#Travel #TravelTuesday #traveltips #Travelers #Italy📍🇮🇹 pic.twitter.com/3S5hIcDbCP
もうひとつ欠かせないのが、アトリエです。道具や材料が揃えられていて、子ども達が創作活動に取り組む場所です。それぞれの教室の中にアトリエが設置されていて、他にも大きなアトリエや暗い部屋、光の部屋など子どもの好奇心を引き出す部屋が用意されています。
プロジェクト活動
代表的な取り組みのひとつに、子ども達が話し合いで決めたテーマを掘り下げて追求していく「プロジェクト活動」があります。長ければ数ヶ月から1年もの間、グループの仲間と協力しながら1つのテーマに向き合います。
子ども達はプロジェクトを通し、自分の考えを伝えたり、友達と協力したりすることを学びます。グループの中では自然に役割が生まれ、責任感とやりがいを実感しながら、自分たちで目的をみつけ、実行する自発性を身につけていきます。
過去に行われた代表的なプロジェクト活動の内容をご紹介します。
- 校庭にやって来る小鳥に興味を持ったたども達は、保育者も含めたグループで話し合い小鳥のために遊園地を作った。
- さらに、小鳥用の小さな湖や鳥小屋を作り、小鳥を驚かさずに観察できる観測所を作るまでに発展した。
- どんな噴水を作るのかグループで話し合いアイデアを紙に書き出した。
- それを元に子ども達で協力しながら、一番上に水を流すシャワーを設置する。
- その下の受け皿で水を受け止める。
- そこから溢れた水を更に下の受け皿で受け止める。
- 最後は一番下の水槽に水が溜まる。という仕掛けがある噴水を作り上げた。
噴水プロジェクトのようなグループ工作は日本の学校でもありそうな気がします。昔クラスのお友達が入院した時に皆んなで千羽づるを作った思い出がありますが、私は不器用で遅かったので友達の負担が増えました…。
ドキュメンテーション
ドキュメンテーションとは、「保育の記録」のことですが、その情報量が一般の保育とは異なります。日々の活動や創作物から、子ども達のなにげない日常会話まで、録画、録音、写真、メモなどで記録し教室や廊下、アトリエなど誰でも見られる場所に掲示されます。
- プロジェクト活動の様子や日常会話をカメラやビデオで記録する
- 写真に子どもの考えや行動の過程がわかるように言葉を加える
- 教室や廊下など誰でも目にできる場所に掲示する
過去の活動を振り返ることで保育者が子ども達を改めて理解し、業務のスキル向上や今後の活動に役立てます。また、子ども達の活動が可視化することで、親や地域住民が関心をもって保育に参加するきっかけとなり、より広いコミュニティ作りにつながります。
子どもにとっても過去の学びや行動を見ることで自分自身を見直す機会となり、今後の活動に役立てることができます。また、自分の考えや行動が、親や保育者から関心を持たれ尊重されていることを子どもが知る手助けになります。
- 保育の向上に役立つ
- 地域との広い交流づくりができる
- 子どもに新たな学びが生まれる
- 子どもが大切にされている証しとなる
子ども達の日常会話まで記録するなんて一人ひとりの個性がちゃんと尊重されている証拠ですよね。まさにレッジョ・エミリア・アプローチの教育理念につながります。
ドキュメンテーションについてこちらもご参考にしてください。
世田谷がアツい!魅惑のアプローチ体験イベント
東京23区ダントツNo.1の人口を誇り、東京住みたい街ランキングにも登場する世田谷区、閑静な住宅街と昔懐かしい風情ある街並みが融合した魅力的な街です。そんな世田谷区でレッジョ・エミリア・アプローチの体験イベントが度々開催されています。
体験イベントがよく開催されているのは、世田谷にある「世田谷ものづくり学校」。廃校した中学校校舎を使い、さまざまなワークショップやセミナー、講座などが年間約700件以上開催されています。当時そのままの教室や廊下を見ると学生に戻りたくなりそうです。
artenarra アルテナラ 世田谷
世田谷を拠点に活動しているプロジェクト団体で、主にレッジョ・エミリア市のお祭り「レッジョナラ」を再現したイベントが運営されています。
- 2017年NPO法人こととふラボと特定非営利活動法人パラ・ラ・ムジカの協働プロジェクトとしてスタート
- 2018年8月に任意団体「アルテナラ」として独立
- イタリアの「レッジョナラ」を世田谷に導入
世田谷で行われるイベントでは、それぞれ立場も職業も異なる地域の人たちがパフォーマーとなっています。ただお話を語るのではなく臨場感たっぷりに演じたり、ネジや木などの小道具で動物の声を再現したりするなど、子ども達を巧みに物語の中に引き込んでいきます。
子ども達はわくわくドキドキしながら、たくさんのお友達と一緒に物語の世界へ冒険します。一般的な読み聞かせと異なり、子ども達の声を受けたパフォーマーが物語をどんどん変化させていきます。
- 子ども達と一緒に物語が作られ進行していく
- 物語の世界を実際に冒険しているかのような臨場感が味わえる
- なかなかできない貴重な体験ができる
- 地域の人がパフォーマーとなり盛り上げている
物語を通して感性が刺激され、子ども達の無限の可能性が引き出されます。ありそうでない貴重な体験をすることができます。
今後もアルテナラでは、さまざまなイベントが開催されるようです。どんどん規模を拡大して「レッジョナラ」のように地域の代表的なイベントとして活躍してもらいたいですね。
Kodomo Edu 英語アートスクール
- 日本とアメリカに住んでいる2人のママ達による運営
- レッジョ・エミリア・アプローチの短期教室「KodomoEdu英語アートスクール」を主催
- 海外の優れたさまざまな教育情報を配信
バイリンガルの先生が英語と日本語で子ども達をしっかりサポートします。ウォルト・ディズニー社専属幼稚園でレッジョ・エミリア・アプローチの美術専門教師を務めたスライヤ・ダウド先生も参加されるなど本場の体験ができるようです。
スクールでは毎朝「自分の好きな○○」などテーマにそったお話をお友達の前で発表します。会社の朝礼で目標と反省を述べさせられた記憶が蘇り、胃が痛くなってきました…。だけどKodomoEduでは大丈夫!プロフェッショナルな先生が緊張をほぐし上手にリードしてくれます。
そうなんです!KodomoEduではスライヤ・ダウド先生をはじめ、美大や芸術大学に在籍するプロフェッショナルな先生やアーティストがしっかりサポートしてくれるんです。子どもの才能がむちゃくちゃ引き出されそうですね。
子ども5人に対し先生が1人体制なのでフォローもバッチリです。紙や粘土、ワイヤー、ソーイングなど他にもさまざまなアイテムを使い友達と協力しながら創作します。作るテーマや方法など子ども達が話し合って進めていきます。
- 短期集中プログラムだから教育法がより実感できる
- 本場の先生によるレッジョ・エミリア・アプローチが体験できる
- 子ども5人に先生1人の少人数制でサポートが充実
- 日本語と英語で授業が行われるから自然と英語が身につく
他にも海外の有名な教育があるのはご存じでしょうか。教育のメリット以外にも気になるマイナス面は何があるのか、こちらもご参考にしてください。
レッジョ・エミリア・アプローチ世田谷区のスクール
イベントや短期教室以外にも、世田谷でレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れて活動しているスクールをご紹介させていただきます。
●Kids Oasis
子どもの個性や感性を大切にし、さまざまな遊びを通して子どもと大人が共に学びあう。そんな保育園を目指しています。
東京都世田谷区下馬5-35-5 東急東横線・祐天寺駅から徒歩9分
●代沢インターナショナルスクール
世田谷区と渋谷区にキャンパスを持ち、“Kids On Air”という小学生向けのアフタースクールもあります。
東京都世田谷区代沢1-27-12 (池ノ上駅)
東京都渋谷区大山町39-20 (代々木上原駅)
●ハッピーホライズンズ インターナショナル保育園
「HAPPY HORIZONS」はひとりひとりの子どもたちが、自分の人生を自分で創り上げていく、そんな大人になることを願っています。
東京都世田谷区奥沢8-29-9 東急大井町線「九品仏駅」徒歩3分
●Kodomo Edu International School
Kodomo Edu International School
2019年4月、中目黒に開校!
短期教室を開催しているKodomoEduが本格的な常設校を開校します。米国のレッジョ・エミリア・アプローチの先生や、レッジョ本の著者であるイタリアの先生など本格的な方々がプログラムに参加してくれます。
詳しくはHPをご確認ください。
他にも幼稚園情報や詳しい教育内容についてこちらをご参考にしてください。
お家で実践するための簡単なポイント
この素晴らしい教育を家庭でも取り入れたくてうずうずしてきたんじゃないでしょうか。ポイントをおさえて子どもと一緒に自由に楽しく実践してみましょう。
まず大切な考え方に、親や先生は子どもとパートナーであるという考え方です。教える側に立つのではなく、一緒になって学ぶ立場にあるということになります。
創造性を高める
子どもが言葉を話せるようになると「なんで?」「どうして?」の質問攻めが待っています。そんな時もできるだけ答えを教えずに、子どもと一緒になって考えるようにしてみてはどうでしょうか。「あなたはどう思う?」と逆に問いかけてください。子どもはきっと答えを見つけてきます。
そして子どもが好きなことや好きな物について、どういうところが気に入っているのか、どうして気に入ったのか尋ねてみましょう。子どもの興味や関心がさらに大きく広がります。
ドキュメンテーションをつくる
大切なのは子どもの意見や考えを尊重してあげる、子どもがもつ潜在能力を親がサポートとして引き出してあげることです。子ども達の無限の可能性がどこまで広がるか楽しみですね。
レッジョ・エミリア・アプローチについてこちらの本もご参考にしてみてください。
まとめ
- レッジョ・エミリア・アプローチは子どもの個性と創造性を大切にした教育
- レッジョ・エミリア市のお祭り「レッジョナラ」が世田谷で体験できる
- 世田谷でレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れているスクールを紹介
- お家でも子どもと一緒になって学んだりサポートしたりしながら子どもの可能性を広げよう