【STEAM教育インタビュー “Science”】宇宙で働くママに聞く幼児教育(2)

ざっくり言うと

  • 進路への葛藤を赤裸々告白!
  • JAXAでの仕事、実際どんなことをやっているの…?!
  • 働くママが教育で心掛けていることを紹介!

宇宙の魅力は「未知がたくさんあること」。

JAXAで働く女性はどんな教育を受けてきた?!仕事もプライベートも充実させ、メディアでも注目される中野氏のキャリアとビジョンとは?

慶應義塾大学理工学部卒業。卒業後、JAXAで【フライトディレクタ】を務めつつ、現在は1児の母でもある、中野氏の豊富な経験や働き方への葛藤、これから理系の世界で活躍する人材に必要と思われる素養や能力の磨き方などについて、ぎふと編集部がお話を伺いました

宇宙の仕事に携わる ー JAXAへ ー

子供の頃の夢としてアメリカに行く前に持っていた夢とアメリカに言ってから持った夢、高校生ぐらいの夢の三パターンに分けて教えてください。

まだ日本にいる頃は幼稚園生であったこともあり、見たものすべてに憧れていたため、セーラームーンに登場するセーラーマーキュリーとセーラージュピターや、幼稚園の先生になることを憧れていました。

アメリカに行ってからは発想が大きく変わりました。その理由としては先生が将来に夢に対して選択肢を与えるのではなく、ありとあらゆるジャンルに対して自発的に調べ物などをして取り組み興味を持たせるものが多かったからです。そういったものを経て宇宙飛行士になるという夢を小学校二年生から高校生になるまで変わらずに持っていました。

高校三年生の時にこのような夢を持っていることに対して、自分の将来を心配していた時期があってその時にもし夢がかなわなかったときに何をしたいかというものを考えるようになりました。

その中で、なぜJAXAを目指されたのですか?

宇宙という分野もとても広く、その中でもJAXAに入り、日本の将来を決めるようなプログラムに参加したくて、今後どのような方法で宇宙産業に入っていくのかというのを考えることに興味があったため、選びました。

その一方で、理工学科出身でモノづくりにも興味があったため重工業系であったり電気系であったりも大学院に進学していたら就職先候補にしていたと思います。

学部卒では入社が難しいと言われていますが、なぜ大学院に行かずに就職を希望したのですか?

JAXAであれば大学院を出ていても出ていなくても入る前に専門的な勉強をするため変わらないと思います。しかし、私の場合はJAXAの入社試験を、大学を卒業した後と、大学院を卒業した後の二回受ける予定であった上に、大学を卒業したのちに受けた一回で合格したため、JAXAだけでしたが、もし不合格であったらいろいろな方面に目を向けていたと思います。

自分のチャンスを何回も作ろうと意識したということですね。
現在の仕事内容を教えてください。

国際宇宙ステーションの運用と管制をやっていて具体的には宇宙飛行士に実験の指示を行うことや、宇宙ステーションの維持をするためのアルファイトディレクターというポジションで指揮をしています。

もう一つはHTVXという開発中の新型宇宙ステーション補給機の運用やチームの立ち上げ、そして訓練責任者としてどのようにしてプロジェクトを成功させるかのプランを構築する仕事をしています。

業務の中で英語を使うことはありますか?

あります。シフトに入っている時間は毎日使いますね。入っていなかったとしてもNASAとの文書は英語であるため、英語は頻繁に使います。

その業務へのやりがいはどこに感じますか?

やりがいは運用管制という立場では訓練すればするほど実力や自信につながるため、訓練のおかげでミッションが成功することや、自分やチームが想像以上の実力を発揮して良い結果を出すことができた瞬間にやりがいを感じます。

業務に関してへこたれそうになったことはありますか。

すごくいっぱいありますね。シフト中にボロボロに調整がうまくいかなかったことや、周りがベテランの中自分が指示を行わなければならないときなど、自分がリーダーシップをとることに憧れを持っていましたが、その時の自分はその理想像からは遠くかけ離れていたことから、毎日一人、家で反省会をしていた時は悲しく、自己嫌悪を感じることも多々ありました。

その時に自分を奮い立たせることはありましたか?

会社の先輩に相談したときに「自分の憧れるリーダー像にたどり着けない」と相談したときに、「そのぐらいの経験で一人前の人たちと同じ事をしようとしているの?その人たちに失礼じゃない?」といわれたことに対して、自分の経験でその人たちと同じような貫録を出そうとするのは到底不可能であることを自覚しました。

そのため自分なりのリーダーシップを模索して、どうすればチームをうまく引っ張っていけるのかを考えるようになったため、先輩から言われた一言はとても自分を奮い立たせました。

それは今後社会復帰を考えるママさんたちにとって心強い言葉になるような気がいたします。

転換期へ。挑戦の日々がはじまる。

記事で取り上げられた後、米国へも出張していますが具体的にどのような業務を担当したのですか?なぜ自分が選ばれたと思いますか?

現在宇宙ステーションは長い間運用されていて、補給機や衛星などは、打ち上げてミッションを行い帰還するというワンセットで活動しています。

宇宙ステーションはそのワンセットごとに期間をインクリメントと呼んで区切りをつけることがあります。その区切りごとにリーダーを割り当てて、各チーム全体で分担していて、ちょうど自分に割り当てられたときがインクリメント48という、大西さんという日本人宇宙飛行士が宇宙に行く期間の前半と重なっていたため選ばれたのだと思いました。

業務になれるまで大変だったと思いますが、どのように勉強されたのですか?

訓練をして本番に臨むという管制官としての頭の働き方があり、一個のことを成功させるのに準備がものすごい時間がかかる上に、一年以上前から始めているものが多いため、抜けなくきちんとやるかということに気を使いながらやっていました。

小さい頃の自分に何かアドバイスできることはありますか?社会に出た今、何をやっておけばよかったと思いますか?

小さい頃は好きなように生きていたのであまり何もないですが、高校生の時が一番悩んでいたので、そのころの自分に「社会人になれているよ」と伝えたいです。

母として働くこと。

現在1児の母とのことですが、出産と仕事との同時は大変だったのでは?

最初はとてつもなく大変で今まであれほど時間があったにもかかわらず、なぜうまくいっていなかったのだろうと思うほどやることが多くなりました。

思い通りに行かないことも多くて、復職するときは仕事へのモチベーションがとても高まっていたのですが、復職したてということもあり体調が崩れてしまうことで、思い通りに働くことのできない自分と仕事をしたいという気持ちが釣り合わなくてとても苦労しました。

子供に何か教育する際に心がけていることはありますか。

何事も強要しないで日常の一部として楽しくやるということを心がけています。

「勉強をしなさい」と言うのではなく、この問題楽しいと思わせるようにしていて、一度「いやだ」と思ってしまうとうまくいかないので、まだ勉強したいと言う感情を持たせたうえで、その気持ちを持ったまま途中で勉強するのを止めるということを日々やっています。

育児や家事の分担はご夫婦でどのように行っていますか。

完全に半分半分で料理のみ私がすべてやっています。送り迎えも、半分半分で平日の送り迎え計10回分の5回をきちんとやってくれます。特に、迎えに行かなくてはならないときは、送りには行くなどと仕事の量も家事の量も半分半分という形です。

プライベートも仕事も充実させる中野氏。
次回、【宇宙業界の展望】と【教育とキャリアの作り方】に続きます。