ざっくり言うと
- モンテッソーリ教育は、子どもだけではなく親にもメリットがある!
- モンテッソーリスクールでの経験を通して実践で使える子育てのコツを伝授
- 子どもの自立心を伸ばす最大の鍵は「親の観察力」
個々の子どもの個性を生かす教育方針や、教室で使用する木製の教具が手先の訓練に良いといった点が取り上げられ、近年は日本でも注目を集めているモンテッソーリ教育。家庭でモンテッソーリ教育を行う「おうちモンテ」なんて言葉も広まってきていますね。我が家では夫のアメリカ駐在に帯同した2年間、娘を現地のモンテッソーリスクールに入れました。モンテッソーリの考え方には、たとえ子どもがモンテッソーリ教育を受けていなくても、ママパパが頭に入れておくことで子育てが少し楽になるヒントがたくさんあります。この記事では私がモンテッソーリ教育について調べた中で学んだことや子どもがスクールに通う中で体験したことを交え、育児のコツについてまとめました。お役立ていただけましたら幸いです。
育児の壁は子どもの理解不足が原因?
子どもを育てていると誰もがぶつかる育児の壁。理由がわからず泣き続けたり、イヤイヤが止まらない子どもに、感情的に怒ったり、対応方法がわからず困り果てたりした経験はありませんか。こんなはずじゃなかったのに…と子どもの寝顔を見て反省したことのある方は少なくないでしょう。
でもそれって、単に子どもの性質や特性を充分に理解していないことが大きな原因かもしれません。親が子どもの成長を促す方法を身につけ、子どもの欲求を満たしてあげられたら、きっと親子の時間がもっと幸せで充実したものになるはずです。
今回はモンテッソーリ教育で考えられている子どもの能力・特徴とそれに関わる大人の役割についてご紹介します。
モンテッソーリ教育的観点での3つの育児のポイント
(1)“子ども”と“環境”を結びつける
大人と共に暮らしている子どもは、大人用に作られた家具や生活雑貨に囲まれています。子どもは好奇心旺盛なので大人の真似をしたがりますが、サイズが合わないために、できないこと・やりづらいことがたくさんあります。子どもが自ら進んで活動できるように環境を整えることが「子どもと環境を結びつける」ということです。
同じスクールに子どもを通わせていた友人は、自宅にこども用の机といすを用意するよう先生から指示がありました。椅子は必ず子どもの足が床につくもの、との指定があったそうです。正しい姿勢でおしごと(モンテッソーリでは教具を使った手作業のことをこう呼びます)に取り組むと体幹が安定し、集中力が高まる効果があるようです。
料理に興味を持った子どもには、補助台や小さめの包丁(初めはテーブルナイフ、慣れてきたら先が尖っていない幼児用ナイフといったように段階を踏むと尚良いですね)を用意することでお手伝いをしてくれるようになったり、朝の支度に必要な洋服を子どもの手の届く場所に置くようにしたりしたおかげで、自分で準備をしてくれたらママやパパも大助かりですよね。
子どもに合った環境を用意すると子どもの成長につながるだけではなく、親にとっても様々なメリットがありますね。
(2)見守る
「見守る」と言うと当たり前だと思われそうですが、子どもがなにかに取り組んでいて、うまくいかない時に良かれと思ってアドバイスをしたり、解決法を教えたりしてしまった経験がある方は少なくないのではないでしょうか。これ、私もついやってしまうので、気持ちはよ~くわかります。でも子どもにとっては試行錯誤しながら自分で考えるせっかくの機会を奪われてしまうし、声を掛けられる度に集中力が途切れてしまう非常に不満の溜まる行為なのです。
子どもが集中しているときは声をかけず、何をしようとしていて何ができていないのか、親はよく観察しましょう。もし子どもが助けを求めてきたら、「見ててね」といってゆっくり見本を見せます。それで充分、というのがモンテッソーリの考え方です。
ちなみに、我が子がアメリカのスクールで初めて覚えてきた文章が「Could you open this snack?」でした。持たせたおやつのパッケージが硬くて開けられなかったため、先生に頼む必要があったのです。私もこれを真似て、困ったことがあったら手伝ってと言おうね、と娘に言うようになりました。当時3歳の娘は、できないことがあるとよく癇癪を起していましたが、この言葉がけのおかげで、落ち着いて対処できることが増え、親も子もストレスを減らすことができました。
このように言葉が通じる年齢の子どもには、自分からヘルプを出すことを教えていくことも大切です。子どもが自ら考え、発信できるように親はあまり先回りしないで見守るようにしましょう。
(3)ほめ方・しかり方
子どもは自分でやり遂げた時点で十分達成感を感じているため、大袈裟に褒める必要はありません。もし褒める際は「〇〇ができるようになったんだね」「最後まであきらめずに頑張ったね」といった具合に、できるだけ具体的に説明して褒めることが望ましいとされています。一番力を入れたポイントはどこかといった質問も、興味を示してくれたと感じて満足感を得られるでしょう。
よくできたね〜といった漠然とした褒め方、結果にフォーカスした褒め方は子どもに響かないどころか、むしろ子どもが失敗を恐れるようになったり、自立心の妨げになってしまう恐れがあるとの研究結果も出ているので注意が必要です。
次に叱り方についてですが、モンテッソーリでは子どもを自立した個人として尊重します。そのためむやみに怒ったりはしません。失敗したときはリカバーする方法を教えてあげます。例えばよく飲み物をこぼす子には、ふきんや雑巾の場所を伝えておき、拭き方、洗い方、干し方を伝えます。次またこぼすことがあれば自分で拭いてね、といって様子を見てみましょう。
また、いたずらしているときは感覚の敏感期であるから見守る、と言われています。敏感期とは、五感を刺激するものに対し強い興味関心を示す時期のことです。いたずらをすることで脳が刺激され、発達しているのです。しかし、実際はそうは言っていられないときもありますよね。娘がスクールに通っているとき、2歳クラスの男の子たち数名が蛇口をひねり、水を出して遊んでいました。先生は、水は大切な資源だから無駄遣いはしないよ、代わりにこちらで遊ぼうと言って、大きめのプラスチックケースに水を溜め、子どもたちを誘導していました。いたずらを看過できない場面では、理由を説明してから別の選択肢を用意してあげると子どもも納得しやすいようです。
まとめ
モンテッソーリの考え方でこれまでの教育と大きく異なっているのは、子どもが主体となっているという点です。子どもは自分で自分を育てられるので、親はあれこれ教え込もうとするのではなく、子どもを観察し、足りないところを補足し、環境を整えるだけでいいのです。まだ赤ちゃんだと(親が勝手に)思っていた子どもも、手や口を出さずじっと見守ると、意外と自分でできることが多く、驚かされるかもしれません。
モンテッソーリの考え方すべてを取り入れることやこれまでの育児法をすぐに変えることは難しいかもしれませんが、子どもがこんなことを考えているんだ、育児にはこんな方法もあるんだと頭に入れておくことで、子どもに対する接し方も変わってくるはずです。
ぜひお子さんの自立心を信じて、成長を見守ってみてください。